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バッハのこと(1)

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ある時、バッハは手紙をくれた。
歌劇場に来てほしい、と書いてあった。
歌劇場に行くと、ステージにバッハが居た。
バイオリンを手にして、何か神妙な面持ちだった。
何か悩んでいるのだとわかった。
手紙に書いてあった。
ずっと後ろの方から、長い時間見つめていたけど、
まだ演奏を始めなかった。
1時間くらい経って、ようやくバッハは演奏を始めた。
5分程弾いて、突然譜面を書き始めた。
ずっと書いていた。
声を掛けられずに居て、手紙の通り来たことを伝えたかったけど、
歌劇場を後にした。
帰って、手紙を書こうか迷ったけど、考えていたら
音楽が浮かんだので、音楽を書くことにした。
そうして、バッハに、歌劇場を訪れたことを長く
伝えられないままでいた。
何年かして、完成した、とバッハから手紙が届いた。
とても良かったと思って、きっとあの時、譜面に書いていた
楽曲だ、と思った。
とても良かった、と思った。

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